プロとアマの違いを語るのはタブーなのか

ミュージシャンにおける”プロとアマの違い”とは何でしょうか?

職業・生業(なりわい)としているか否かというのは一つの答えです。

いわゆる辞書的な意味の違いで、日常会話で使われるプロ・アマという言葉もこの用法がほとんどでしょう。

じゃあそれ以外の違いは何でしょうか?

目次

“職業”以外の違いは?

いろんな比較軸が思い浮かびます。

  • 演奏技術
  • 集客力
  • 知名度
  • 対価の大小
  • 音楽に対する意識
  • 実績
  • 責任 

これらはプロとアマの違いとしてよく取り上げられる項目ですが、果たしてこれらの項目で納得感ある切り分けができるでしょうか?

明確な比較軸は設定できない

そもそも”プロとアマの違い”のような“白か黒か”という二項対立的なテーマに答えを出すためには、その比較基準を明確にする必要があります

でも、上の項目を見るとそれは難しい。

なぜなら、人によって基準や価値観が異なる要素だから。違う長さのモノサシで測りあっても答えは合いません。平たく言うと「人による」です。

例えば、”演奏技術”の良し悪しなんかは数値化できないし、評価する人の習熟度によって答えは異なります。”音楽に対する意識”も同様に、何がどのレベルまで達していたら意識が高いと言えるのか?も人によって考えが異なります。

こういったテーマはある意味「男と女の性格の違い」みたいなレッテル貼りと捉えられかねず、ネットに晒すと不毛な議論が生じるリスクがあります。

経験則や主観で「プロとはこういうものだ」なんてSNSで発信しようもんなら、閲覧者との見解の相違が生じて、主観とポジショントークの応酬、程度が悪い場合は炎上するケースもあります

アマは金をとるべきじゃない
集客力はあるが、あんな演奏をするのはプロではない
プロとアマの違いはテクニックではなく人間性にある
職業としてのプロアマ関係なく、金を取るならプロだ

これらはネットで散見される一例ですが、納得できる意見もあればそうでない意見もあるでしょう。「誰の誰に対する意見か」によっても変わってきます。

こんなこと言うと元も子もないんですが、満場一致の答えは確実に出ないので、分類したい人は自分の中で”プロとアマの違いはココだ”と考えを持てばそれでよいのかなと思います。

いくら音楽が素晴らしかろうが金を取ってようが取ってまいが、それをプロ・アマと認定するかしないかは“その人にとってのプロ・アマの定義”に当てはめた結果でしかない訳です。

一流に学ぶプロとアマの違い

“プロとアマの違い”の答えは「”生業としているか否か”。それ以外は人それぞれ」ですが、もう少し言語化された答えも欲しいところです。ということで、超一流のプロの考えをご紹介します。

皆さんご存じ国民栄誉賞受賞者、プロ将棋棋士の羽生善治さんです。

羽生さんは著書『決断力』にて、将棋界の現状を述べられています。

将棋の世界にかぎらず、今、プロとアマの垣根が低くなっている。線引きが難しい時代になってきているので、これからは、プロとは何かという定義も変化していくだろう。それぞれが完全に閉鎖され、交流がなければ全く別の世界だと言って仕舞えば済む話だが、現実はそうでなくなっている。

引用:羽生善治『決断力』

これは音楽の世界にも当てはまりそうですね。プロとアマの垣根が低く、入り混じってセッションしたりライブしたりするのはよくある光景です。

それを踏まえ、プロとアマの違いをこのように表現されています。

プロらしさとは何か?と問われれば、私は、明らかにアマチュアとは違う特別なものを持っており、その力を、瞬間的ではなく持続できることだと思っている。

引用:羽生善治『決断力』

なんと、将棋の技術や人間性のことには全く触れられていません。割とふわっとしています。

結局、プロとアマは完全に分離できない概念だから「プロらしさ」とか「アマチュアとは違う特別なもの」とか、抽象化された表現に落ち着いてしまうのだと思います。後段の「その力を瞬間的ではなく持続できること」という文章も同様に、”その力”とは書いているものの”どんな力か”までは言及されていません。

これに加えて、「瞬間的ではなく持続できること」いう時間軸の概念は、結果を出し続けなければいけないプロを的確に表していると思います。

この表現で特に良いなと感じたのは、どの分野にも応用できる汎用性を持っている点です音楽界に限らず、どんな業界や仕事でも、当てはまるんじゃないでしょうか。なにより、超一流の見解なので納得感が高いです。

プロアマ論に興味ある方はご参考まで(再掲)

プロらしさとは何か?と問われれば、私は、明らかにアマチュアとは違う特別なものを持っており、その力を、瞬間的ではなく持続できることだと思っている。

引用:羽生善治『決断力』

ちなみにご紹介した本『決断力』では超一流になるに至った羽生さんの成長過程や物事に対する取り組み方が具体的に知れます。内容は将棋に特化しているわけではないので、駒の動かし方を知らなくても読めます。仕事にも音楽にも活かせそうな、問題解決の考え方が参考になりました。

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