スケールを覚えるメリットのひとつは、演奏を聴いているときに「今のフレーズはあのスケールね」と察する力がつくことだと思います。
単なる音の羅列にしか聴こえなかったものが、「◯◯スケール」というラベルをつけられるようになると、ぐっと整理されて、フレーズが覚えやすくなります。
今回は、スケールについての基本的な考え方を少し整理してみます。
スケールを覚えるのはしんどい
スケールの話題になると、多くの人が「このコードではこのスケールが使える」とか、「チャーチモードがどうこう」といった理論の話に触れると思います。
でも、ジャズピアノを始めて数年くらいの人がそれを知っても、正直ピンとこないと思います。初心者のうちから真面目にスケールを勉強しようとすると、理解も難しく、アドリブにも活かしづらいので挫折しがちです。
わたし自身も、最初からスケールを覚えようとしたわけではありません。ひたすら音源をコピーして、「あ、このフレーズってこのスケールで説明できるのか」と後から気づく、そんな順序でした。
とはいえ、スケールをまったく知らないのも考えものです。最低限の考え方だけでも知っておくと、耳コピや分析がずいぶん楽になります。
今回は、その「スケールの考え方」を中心に整理してみたいと思います。
スケールは「コードに対して使える音」の集まり
マーク・レヴィンの『THE JAZZ THEORY』という有名な理論書に、スケールについてこんな記述があります。
スケールとコードは同じものを2つの異なった形で表したものにすぎないのです。
Mark Levine (著), 愛川 篤人 (訳) 『ザ・ジャズ・セオリー』ATN,2004,p.30
この「スケールとコードは、実は同じものを別の角度から見ているだけ」という考え方を初めて知った時は、目から鱗でした。
「このコードではこのスケールが使える」と言われると、あたかもスケールとコードが別々のアイテムであるように聞こえますが、そうではないのです。
実際、上手いプレイヤーはスケールを「あるコードに対して使える音の集まり」、つまりコードそのものと一体のものとして見ています。
これは、音楽大学などで体系的に学んでいる人にとっては当たり前の感覚かもしれません。しかし、独学でジャズを学んでいると、この視点にはなかなか気づけないのではないでしょうか。
なんだか難しそうな話に聞こえるかもしれませんが、「スケールとコードは表裏一体なんだな」という考え方があることを知っておくだけで、きっと学習の助けになると思います。
主要なスケールは4つで十分
『THE JAZZ THEORY』には、非常に救いのある(?)記述があります。
ジャズの初心者のほとんどは、あれだけたくさんのコードがあるのだから、スケールもそれだけたくさんあるに違いないと思い込んでいます。それは間違いです。ほとんどすべてのコード・シンボルを、わずか 4つのスケールで解釈することが可能なのです。
・メジャー・スケール
・メロディック・マイナー・スケール
・ディミニッシュ・スケール
・ ホールトーン・スケール
Mark Levine (著), 愛川 篤人 (訳) 『ザ・ジャズ・セオリー』ATN,2004,p.30
なんと、ジャズに登場するほとんどのコードを、たった4つの基本スケールで解釈できると言ってくれているのです。これも目から鱗の考え方でした。
もちろん、ジャズには他にも様々な名前のスケールがあります。でも、まずはこの4つを押さえておけば十分かと思います。具体的な例はまた別の記事に回すとして、わたし自身、ジャズを学んでいく中でこの4つのスケールの重要性を実感しています。
追加するならば、ジャズ特有のサウンドを生み出すブルー・ノート・スケールも含めて5種類。これらのスケールを押さえておけば、だいたいのことはなんとかなると思います。
まとめ
今回は「スケールそのもの」ではなく、「スケールの考え方」を中心にまとめました。
後日、ここで挙げた基本スケールそれぞれについて整理していこうと思います。


